銀行の残高を見て手が震えた。妻にバレたら離婚されるかもしれない。でも、もう止められない。

THE STELLAのプレミアムプランを始めて8ヶ月。気づけば30万円近くがワインに消えていた。最初は「自分へのご褒美」のつもりだった。それがいつの間にか、毎月の楽しみになり、やがて人生の優先順位が狂い始めた

THE STELLAとは何か?実際に使ってわかった真実

THE STELLAは、カリフォルニアのナパ・ソノマ地域の希少なブティックワイナリーのワインを毎月届けてくれる会員制サービスだ。一般的なワインサブスクとは一線を画す、まさに「ワイン界のエルメス」のような存在。

私が初めてTHE STELLAを知ったのは、会社の先輩の自宅パーティーだった。そこで飲んだワインの深みと複雑な味わいに衝撃を受け、ボトルを見せてもらうと「THE STELLA」のロゴが。その場で検索し、価格を見て一瞬躊躇したが、「人生一度きり」という悪魔の囁きに負けた

3つのプランと実際のコスパを徹底検証

THE STELLAには3つのプランがある:

  • スタンダードプラン:月額16,500円(送料別1,650円)
  • プレミアムプラン:月額33,000円(送料別2,200円)
  • ダイヤモンドプラン:月額66,000円(送料別2,200円)

私はプレミアムプランを選んだ。理由は単純で、「どうせやるなら中途半端はやめよう」という、今思えば危険な考えだった。

実際に届いたワインの価値は?

最初の月に届いたのは、2018年産のカベルネ・ソーヴィニヨン。調べてみると、アメリカでの市場価格は約180ドル。日本で個人輸入すると関税や送料を考えると3万円は軽く超える。その瞬間、「これは投資だ」と自分に言い聞かせた。

しかし、2ヶ月目に届いたワインは市場価格が120ドル程度。3ヶ月目は2本届いたが、合計しても200ドル程度だった。毎月必ず元が取れるわけではないという現実に直面した。

なぜ私はやめられないのか?3つの心理的要因

1. 希少性の呪縛

THE STELLAが扱うワインは、日本では他で手に入らないものがほとんど。「このワインを飲めるのは日本で自分だけかもしれない」という優越感は、想像以上に中毒性がある。

先月届いたワインは、年間生産量わずか300ケースの超希少品。ワイナリーの公式サイトでも「Sold Out」の文字。この「今しか飲めない」という感覚が、理性的な判断を狂わせる。

2. ソムリエとの繋がり

THE STELLA専任ソムリエの秋月康孝氏から届く月次レポートは、単なる商品説明ではない。ワイナリーオーナーとの個人的なエピソード、収穫時の天候、醸造家の哲学まで詳細に記されている。

まるで自分もナパバレーのワイン文化の一員になったような錯覚に陥る。これは巧妙に仕組まれた顧客体験だと分かっていても、その世界観から抜け出せない。

3. 投資としての自己正当化

高額な出費を正当化するため、私は「ワイン投資」という言葉を使い始めた。実際、一部のカルトワインは数年で価値が2倍、3倍になることもある。

しかし現実は、飲んでしまえば投資価値はゼロ。それでも「いつか売れば儲かる」と思いながら、結局は全て飲んでしまう。この矛盾した行動こそが、依存症の典型的な症状だと後で知った。

他社サービスとの比較:冷静に分析してみた

妻にバレる前に、せめて他のサービスと比較して正当性を見つけようと思った。以下が主要3社の比較結果だ:

サービス名 月額料金 ワインの特徴 独自性
THE STELLA 16,500円〜 ナパ・ソノマの希少ワイン 専任ソムリエの個人ネットワーク
Firadis WINE CLUB 3,000円〜 世界各国の厳選ワイン プロ向け卸売業者の選定
ミシュラン星付きソムリエ厳選ワイン 5,500円〜 フランス中心の自然派ワイン ミシュランレストランでの採用実績

数字だけ見れば、THE STELLAは圧倒的に高額だ。しかし、希少性という点では他の追随を許さない。この「比較できない価値」こそが、私を苦しめている原因かもしれない。

8ヶ月使って分かった本当のメリットとデメリット

予想外のメリット

1. ビジネスでの話題作り
取引先との会食で「最近飲んだナパのカルトワインが...」と話すと、確実に相手の目が変わる。実際、この話題がきっかけで2件の大型契約が決まった。

2. ワイン知識の急速な向上
毎月届く詳細なテイスティングノートと、実際に飲む体験の積み重ねで、ワインを語れるレベルまで成長した。

3. 特別な日の演出力
結婚記念日に開けた2015年のカベルネは、妻も「これは違う」と認めた。その夜の雰囲気は、まさにプライスレスだった。

直視したくないデメリット

1. 経済的プレッシャー
月3万5千円の固定費は、冷静に考えれば新車のローン並み。ボーナス月でないと支払いが苦しい月もある。

2. 保管場所の問題
ワインセラーを持っていない我が家では、適切な保管が難しい。夏場は特に心配で、結局2万円のワインセラーを追加購入した。

3. 飲むタイミングの難しさ
高額なワインほど「もったいなくて開けられない」症候群に陥る。気づけば飲み頃を過ぎてしまったボトルも数本ある。

妻にバレた日:そして出した結論

ついに恐れていた日が来た。クレジットカードの明細を見た妻の顔が青ざめていく。「これ、何?」という問いに、正直に全てを話した。

予想に反して、妻は怒らなかった。ただ、「あなたがそんなに夢中になるものがあってよかった」と言った後、「でも、家族の将来も考えて」と付け加えた。

その夜、二人でプレミアムプランで届いた2019年のピノ・ノワールを開けた。複雑で繊細な味わいを共有しながら、今後について話し合った。

THE STELLAは誰に向いているのか?

向いている人

  • 年収1000万円以上で、趣味に月3万円使える余裕がある
  • ワインを体験や知識への投資と考えられる
  • 希少性や独自性に価値を感じる
  • ビジネスでの人脈構築にワインを活用したい

向いていない人

  • コスパを最重要視する
  • ワインは「美味しければいい」という価値観
  • 毎月の固定費増加に抵抗がある
  • ワインセラーなど保管環境が整っていない

最終的な決断:スタンダードプランへの移行

妻との話し合いの結果、完全にやめるのではなく、スタンダードプラン(月額16,500円)への移行を決めた。月1本なら、特別な日のためのワインとして正当化できる。

プレミアムプランの月2本ペースでは、正直飲みきれないこともあった。むしろ月1本の方が、一本一本を大切に味わえるようになった。

8ヶ月間の総括:高級ワインサブスクの真実

THE STELLAに使った総額は約30万円。冷静に考えれば、家族旅行に3回は行けた金額だ。後悔はある。でも、得たものも確かにあった。

ワインを通じて広がった世界観、ビジネスでの会話の幅、そして何より「本物を知る」という経験。これらは数値化できない価値だ。

ただし、この価格帯のサービスは麻薬的な中毒性がある。一度味わった特別感から抜け出すのは、想像以上に難しい。始める前に、本当に必要か、続けられるか、家族の理解は得られるか、慎重に検討すべきだ。

私のように「気づいたら人生の優先順位が狂っていた」とならないために、この体験記が誰かの参考になれば幸いだ。

今夜も、スタンダードプランで届いた2020年のメルローを妻と分け合う。月16,500円の贅沢。これが私たち夫婦の、新しいバランスだ。