夜中にふと目が覚めると、仏壇の横に置かれた白い骨壺が月明かりに照らされている。もう7年になる。母の遺骨だ。

「いつか立派なお墓に...」そう思い続けて、気がつけば2500日以上が過ぎていた。私と同じような人が、実は全国に数十万人いるという事実を知ったのは、つい最近のことだった。

誰も語らない「遺骨難民」という現実

厚生労働省の統計によると、年間約140万人が亡くなる日本で、その約15%にあたる20万件以上の遺骨が、何らかの理由で適切に埋葬されていない可能性があるという。

私がこの問題に直面したのは、母が急逝した2017年の冬だった。葬儀社から提示された墓地購入費用は280万円。さらに年間管理費1万2000円。シングルマザーとして私を育ててくれた母のために、きちんとした墓を建てたい。でも、その金額は...

墓地価格の衝撃的な内訳

項目金額
墓石代120万円~200万円
墓地使用料50万円~150万円
工事費10万円~30万円
年間管理費4,000円~15,000円

結局、私は決断を先延ばしにした。「来年には...」「ボーナスが出たら...」そんな言い訳を重ねながら。

送骨という選択肢を知った日

転機は昨年の秋。同じマンションに住む70代の女性との立ち話がきっかけだった。

「実は私も...」

彼女も夫の遺骨を3年間自宅に置いていたという。しかし、最近「送骨」というサービスを利用して永代供養したと聞いて、私は初めてその存在を知った。

送骨サービスの仕組み

  1. 専用の梱包キットが自宅に届く
  2. 骨壺を梱包して郵送する
  3. 提携寺院・霊園で永代供養される
  4. 年間管理費は一切不要

正直、最初は「遺骨を宅配便で送る」という行為に強い抵抗感があった。不謹慎ではないか?母に申し訳ないのではないか?

3つのサービスを徹底比較してみた結果

悩んだ末、私は主要な送骨サービス3社を詳しく調べることにした。実際に資料請求し、電話で問い合わせもした。

サービス名 遺骨相談.com A社 B社
基本料金 39,800円 45,000円 50,000円
離島料金 無料 +5,000円 +3,000円
納骨先 柳川さくら墓苑(福岡) 関東の提携寺院 全国5か所から選択
証明書発行 オプション対応 基本料金に含む +10,000円
合同供養祭 年1回(秋彼岸) 年2回 なし

比較してみると、遺骨相談.comは価格面で最も良心的だった。特に離島料金が無料という点は、地方在住者にとって大きなメリットだと感じた。

実際に利用してみて感じた本音

結論から言うと、私は遺骨相談.comを利用することに決めた。申し込みから納骨完了まで、約10日間の体験を詳しく記録しておきたい。

Day 1-3:申し込みから梱包キット到着まで

オンラインフォームから申し込み。振込確認後、2日で梱包キットが到着。段ボールには「梱包キット」とだけ記載されており、近所の目を気にする必要がなかったのは助かった。

Day 4:梱包作業の意外な難しさ

マニュアルは分かりやすかったが、実際に母の骨壺に触れると涙が止まらなかった。7年間毎日手を合わせてきた骨壺。これで本当に良いのか...何度も手が止まった。

特に苦労したのは、骨壺の中に溜まっていた水の処理。長期保管による結露だろうか。マニュアルには「水抜きをしてください」とあったが、精神的にきつい作業だった。

Day 5:郵送という最大の心理的ハードル

梱包は完了したものの、郵便局への集荷依頼の電話がなかなかできなかった。「品名は何ですか?」と聞かれたら...そんな不安があった。

実際は「梱包済みの荷物です」と答えるだけで済んだ。ゆうパックの職員も慣れた様子で、特に詳しく聞かれることはなかった。

Day 10:納骨完了の通知

メールで納骨完了の連絡が届いた。添付されていた納骨先の写真を見て、ようやく肩の荷が下りた気がした。

送骨サービスの意外なデメリット

実際に利用してみて感じた問題点も正直に書いておきたい。

1. 親族の理解を得る難しさ

叔母からは「そんな方法で供養になるの?」と強い反対を受けた。世代によって価値観の違いは大きく、説得には相当な時間を要した。

2. 供養の実感が薄い

従来の墓参りのような「手を合わせる場所」が遠くなってしまう。福岡県の納骨先まで、私の住む東京からは簡単には行けない距離だ。

3. 後悔の可能性

一度合葬してしまうと、後から個別に取り出すことはできない。この不可逆性は、申し込み前に十分検討すべき点だ。

それでも送骨を選んだ理由

デメリットを理解した上で、なぜ私は送骨を選んだのか。

最大の理由は、母への申し訳なさからの解放だった。「いつかちゃんとしたお墓に...」という呪縛から7年。その間、母は成仏できているのか、私の不甲斐なさを恨んでいないか、そんな思いに苦しんだ。

送骨という選択は、確かに理想的ではないかもしれない。でも、少なくとも母の遺骨は、きちんとした場所で、定期的に供養されることになった。

【私のように悩んでいる方へ】

遺骨を自宅に置き続けることは、決して悪いことではありません。でも、もしあなたが私と同じように「申し訳なさ」に苦しんでいるなら、送骨という選択肢があることを知ってほしい。

送骨後の心境の変化

納骨から3ヶ月が経った今、私の生活は確実に変わった。

毎朝、仏壇の前で手を合わせる習慣は変わらない。ただ、そこに骨壺はない。代わりに、納骨証明書と母の写真、そして柳川さくら墓苑の写真を飾っている。

不思議なことに、心の重荷が軽くなったことで、母との思い出をより素直に振り返れるようになった。生前の母は「子供に迷惑をかけたくない」が口癖だった。きっと、この選択を理解してくれていると思う。

送骨サービスが映し出す現代日本の課題

私の体験は、決して特殊なケースではない。

  • 核家族化による墓の継承者不足
  • 都市部の墓地不足と高騰する墓地価格
  • 非正規雇用の増加による経済的困窮
  • 宗教離れによる寺院との関係希薄化

これらの社会問題が複雑に絡み合い、「遺骨難民」を生み出している。送骨サービスは、その解決策の一つに過ぎない。

最後に:死生観の変化を受け入れる勇気

「立派な墓を建てることが最高の供養」という価値観は、もはや絶対的なものではないのかもしれない。

大切なのは、形式ではなく故人を想う心。送骨という選択をした私は、今でも母を想い、感謝の気持ちを忘れない。それこそが、本当の供養ではないだろうか。

もしあなたが、遺骨の問題で悩んでいるなら、まずは資料請求から始めてみてほしい。すぐに決断する必要はない。ただ、選択肢があることを知るだけでも、心は少し軽くなるはずだ。