ThinkPadを買って3週間で売却した。そして2ヶ月後、また買い直した。この矛盾した行動の裏には、誰も語らないThinkPadの真実があった。

私は15年間、様々なノートPCを使い倒してきたが、ThinkPadほど愛憎入り混じる感情を抱いたマシンはない。今回は、ThinkPad X1 Carbon Gen13を中心に、なぜ一度は手放したのに再購入に至ったのか、その衝撃的な体験を共有したい。

ThinkPadを選んだ理由と最初の失望

きっかけは取引先での出来事だった。プレゼン中にMacBookがフリーズし、30分間の沈黙。隣の席の人が黙ってThinkPadを差し出してくれた。その堅牢性と安定性に感動し、即座に購入を決めた。

しかし、届いたThinkPadを開封して愕然とした。2024年の最新モデルなのに、デザインが1990年代から変わっていない。黒い箱。ただそれだけ。同僚からは「お父さんのパソコンみたい」と言われた。

ThinkPad最新モデル

使い始めて分かった3つの重大な欠点

1. トラックポイントという赤い悪魔

ThinkPadの象徴である赤いトラックポイント。最初は「なんだこの邪魔なボタンは」と思った。キーボードの真ん中にあるため、タイピング中に指が当たる。慣れるまでに2週間かかったが、その間のストレスは相当なものだった。

2. 価格が高すぎる現実

ThinkPad X1 Carbon Gen13の価格を見て二度見した。最小構成でも20万円超え。同スペックの他社製品と比較すると、約5-7万円高い。この価格差を正当化できる理由が見つからなかった。

3. 重量とバッテリーの矛盾

「約986g」という触れ込みだったが、ACアダプターを含めると1.3kgを超える。さらに、カタログスペックでは「最大28時間」のバッテリー駆動時間も、実際の使用では6-8時間が限界だった。

それでも手放せなくなった5つの理由

3週間で売却したThinkPadだが、その後使った他のノートPCでは満足できなくなってしまった。結局、2ヶ月後に再購入することになった理由がこれだ。

1. 圧倒的なキーボードの打鍵感

ThinkPadを手放してから気づいた。あのキーボードの感触が忘れられない。深いストローク、確実なフィードバック、絶妙な反発力。1日8時間以上タイピングしても疲れないのは、ThinkPadだけだった。

2. 軍用規格の耐久性は伊達じゃない

再購入の決め手となった出来事がある。カフェでコーヒーをこぼし、他社製ノートPCが即死。修理見積もり8万円。一方、同じ状況でThinkPadを使っていた友人は、ティッシュで拭いて普通に使い続けていた。MIL-STD 810H準拠は伊達じゃない。

3. トラックポイントの中毒性

最初は邪魔だと思ったトラックポイントだが、慣れるともう戻れない。キーボードから手を離さずにカーソル操作ができる効率性。特にエクセル作業では、マウスの3倍は速い。

4. セキュリティ機能の充実度

ThinkShieldという統合セキュリティは、他社には真似できないレベル。指紋認証、顔認証、TPMチップ、プライバシーシャッター。在宅勤務が増えた今、これらの機能の重要性を痛感している。

5. サポート体制の違い

24時間365日対応のプレミアサポート。実際に深夜2時にトラブルが発生した際、15分で解決した。他社では考えられない対応だった。

ThinkPad 33周年記念セール

他社ビジネスノートPCとの詳細比較

ThinkPadの真価を理解するため、主要な競合製品と比較してみた。

項目 ThinkPad X1 Carbon Dell Latitude 9440 HP EliteBook 840 G11
価格(同等構成) 約25万円〜 約22万円〜 約18万円〜
重量 986g〜 1,210g〜 1,360g〜
キーボード品質 業界最高峰 良好 標準的
耐久性認証 MIL-STD 810H(12項目) MIL-STD 810G(一部) MIL-STD 810H(5項目)
バッテリー駆動時間 実測6-8時間 実測7-9時間 実測8-10時間
特徴的機能 トラックポイント、ThinkShield Dell Optimizer AI HP Wolf Security

実際に使って分かったThinkPadが向いている人・向いていない人

ThinkPadが向いている人

  • 文章を大量に書く人:キーボードの品質は他の追随を許さない
  • 移動が多いビジネスパーソン:軽量性と耐久性の両立
  • セキュリティを重視する企業:ThinkShieldは業界トップクラス
  • 長期的な投資として考える人:5年使えば元は取れる

ThinkPadが向いていない人

  • デザインを重視する人:正直、見た目は20年前から変わらない
  • 予算が限られている人:同スペックなら他社の方が安い
  • ゲームをする人:ゲーミングPCではない(Legionシリーズを選ぶべき)
  • 最新技術をすぐ試したい人:保守的な設計思想

購入前に絶対確認すべき5つのポイント

私の失敗と成功から学んだ、ThinkPad購入時の注意点をまとめた。

1. シリーズ選びは慎重に

X1シリーズは最高峰だが、予算に余裕がなければXシリーズやLシリーズでも十分。特にThinkPad X13 Gen6は、コストパフォーマンスが優れている。

2. カスタマイズは必須

標準構成では物足りない。最低でもメモリ16GB、SSD 512GBは必要。後からアップグレードできない部品も多いので、初期投資は惜しまないこと。

3. セール時期を狙う

年に数回の大型セールでは、30-40%オフになることも。特に決算期(3月、9月)は狙い目。

4. 保証の延長は検討価値あり

高額な投資なので、3年保証への延長を推奨。特にアクシデント・ダメージ・プロテクションは、コーヒーこぼしなどもカバーしてくれる。

5. 実機を触ってから決める

キーボードの感触、トラックポイントの操作感は人による。可能なら店頭で試すか、返品可能な購入方法を選ぶこと。

ThinkPad特別価格

1年使った今の率直な感想

再購入から1年。ThinkPad X1 Carbon Gen13は、今や私の仕事に欠かせない相棒になった。確かに高額だし、見た目も地味。でも、道具としての完成度は他の追随を許さない。

特に印象的だったのは、ある日の出来事。新幹線でプレゼン資料を作成中、隣の席の人もThinkPadを使っていた。お互い無言で頷き合った瞬間、「分かる人には分かる」という感覚を共有できた。

ThinkPadは万人向けではない。しかし、本気で仕事に向き合う人にとっては、最高のパートナーになる。私のように一度手放しても、結局戻ってくる人は少なくないはずだ。

最後に:ThinkPadという選択

「なぜThinkPadを選ぶのか」という問いに対する答えは簡単だ。仕事の質を上げたいから。キーボードの打鍵感、堅牢性、セキュリティ、すべてが仕事の効率と品質に直結している。

確かに初期投資は高い。でも、5年使えば1日あたり137円。カフェのコーヒー代より安い。そう考えれば、決して高い買い物ではない。

ThinkPadは「ただのパソコン」ではない。「仕事のパートナー」だ。もしあなたが本気で仕事に取り組んでいるなら、ThinkPadはその期待に必ず応えてくれるだろう。