冷凍庫を開けるたび、妻の冷たい視線を感じていた。

「また冷凍弁当?」という無言の圧力。3ヶ月前まで毎晩繰り返されていた夫婦の食卓での会話は、今では完全に消えていた。

体重計の数字は82kgから70kgへ。確かに痩せた。腹筋も薄っすらと見えるようになった。でも、なぜか達成感よりも虚しさの方が大きかった。

マッスルデリの冷凍弁当

予想外の副作用:家族との食卓が消えた日々

マッスルデリを始めたきっかけは単純だった。40歳を過ぎて膨れ上がった腹。健康診断でイエローカードを突きつけられた中性脂肪の数値。

食事管理の常識が変わる」という謳い文句に惹かれた。実際、その通りだった。ただし、想像していたのとは違う意味で。

最初の1週間は新鮮だった。レンジで5分温めるだけ。洗い物も出ない。カロリー計算も不要。すべてが完璧に管理された食事

でも2週目から違和感を感じ始めた。

「今日は何食べたい?」という妻の問いかけがなくなった。
「美味しかった?」という子供たちの反応を見ることもなくなった。
「もう少し薄味にして」という要望を伝えることもできなくなった。

数字で見るマッスルデリの現実

感情論だけでは説得力がない。実際のデータを見てみよう。

項目 マッスルデリ 一般的な宅配弁当 自炊
1食あたり価格 1,008円〜1,468円 600円〜800円 300円〜500円
タンパク質量 30g〜65g 15g〜25g 変動
カロリー 350〜550kcal 400〜600kcal 変動

価格だけ見れば確かに高い。でも、ジムのプロテイン代や外食費を考慮すると、実はそこまで割高ではない。問題は価格じゃなかった。

本当に失ったもの:食べることの意味

3ヶ月間、朝昼晩とマッスルデリを食べ続けた。メニューは50種類以上。飽きることはなかった。

鶏肉のトマト煮込み、サバの味噌煮、豚肉の生姜焼き…どれも栄養バランスは完璧だった。

マッスルデリのメニュー例

でも、ある日気づいた。

食事が単なる栄養摂取行為になっていた。楽しみでもなく、コミュニケーションでもなく、ただの作業。

同僚とのランチを断り続けた。
友人との飲み会も避けるようになった。
家族との外食も「カロリーが…」と言い訳して行かなくなった。

それでも続ける人がいる理由

ここまで否定的なことばかり書いてきた。でも、マッスルデリには確実に向いている人がいる。

私の同僚のK君(28歳独身)は、今でも継続している。彼にとっては最高のサービスだという。

「料理する時間がもったいない」
「栄養計算が面倒」
「一人暮らしだから誰かと食べることもない」

確かに、彼のようなライフスタイルなら完璧にフィットする。実際、彼は半年で体脂肪率を22%から15%まで落とした。

競合他社との本音比較

フィットネス向け宅配弁当は他にもある。実際に試したものを比較してみる。

nosh(ナッシュ)
価格:599円〜
味:★★★★☆
ボリューム:やや少なめ
特徴:糖質制限に特化。味のバリエーションが豊富だが、タンパク質量はマッスルデリに劣る。

B-Kitchen
価格:1,028円〜
味:★★★☆☆
ボリューム:十分
特徴:フィットネス向けだが、メニュー数が少ない。飽きやすい。

Dietician(ダイエティシャン)
価格:898円〜
味:★★★★☆
ボリューム:普通
特徴:医療機関と連携。栄養バランスは優秀だが、筋肉増強には物足りない。

結論として、筋肉をつけたいならマッスルデリ、ダイエット重視ならnosh、という使い分けが妥当だろう。

3ヶ月後の変化と後悔

体重:82kg → 70kg(-12kg)
体脂肪率:28% → 18%(-10%)
ウエスト:92cm → 78cm(-14cm)

数字だけ見れば大成功だ。

でも、失ったものも多い。

妻との会話時間:1日平均45分 → 15分
家族での外食回数:月4回 → 0回
友人との飲み会参加率:80% → 20%

マッスルデリの実際の弁当

今だから言える本当の使い方

マッスルデリを全否定するつもりはない。むしろ、正しく使えば最強のツールだと思う。

私が提案する使い方:

1. 期間限定で使う
大会前の追い込み期間や、健康診断前の1〜2ヶ月など、明確な目標がある時期に限定する。

2. 平日ランチのみ
仕事で忙しい平日の昼食だけマッスルデリにする。朝晩は家族と一緒に。

3. 週3〜4回のローテーション
完全置き換えではなく、自炊や外食と組み合わせる。

4. 栄養学習ツールとして
理想的な栄養バランスを体感し、自炊の参考にする。

意外な発見:リバウンドしなかった理由

マッスルデリをやめて6ヶ月。体重は72kg前後で安定している。

なぜリバウンドしなかったのか?

それは、3ヶ月間で適正な食事量が身についたから。今まで、どれだけ食べ過ぎていたかを思い知らされた。

今では、外食でも「これくらいで十分」という感覚がある。マッスルデリが教えてくれた最大の収穫かもしれない。

本当に必要な人、必要じゃない人

マッスルデリが向いている人:

  • 一人暮らしで料理する時間がない
  • 短期間で確実に結果を出したい
  • 栄養計算が苦手だが、体を変えたい
  • コンテスト出場など明確な目標がある
  • 食事に対するこだわりが薄い

向いていない人:

  • 家族と食事を楽しみたい
  • 食べることが趣味
  • 予算に余裕がない
  • 料理が好き
  • 長期的な健康管理を考えている

最後に:食事の本当の価値とは

12kg痩せた。理想の体型に近づいた。でも、本当に幸せになったかと聞かれると、答えに詰まる。

今は週末だけマッスルデリを使っている。平日は妻の手料理を食べ、時には家族で外食も楽しむ。体重は少し増えたが、笑顔は確実に増えた。

マッスルデリは素晴らしいサービスだ。ただ、使い方を間違えると、体重以上に大切なものを失う可能性がある。

あなたにとって、食事とは何か
あなたにとって、理想の体型とは何か
あなたにとって、幸せとは何か

その答えが明確なら、マッスルデリはきっと強い味方になるだろう。

あなたの選択を応援します

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※この記事は個人の体験に基づくものです。効果には個人差があります。