ガット張り替えの最中、「バキッ」という音とともに愛用のラケットフレームに亀裂が入った瞬間、頭が真っ白になった。

5年間使い続けた相棒。プロショップに持ち込んでも「これは無理ですね」と断られ、メーカーに問い合わせても「修理対応は終了しています」の一点張り。新品なら3万円以上するモデルだし、何より思い入れが強すぎて捨てられない。

そんな時、バドミントン仲間から聞いた「どんなラケットでも修理してくれる工房がある」という話。半信半疑で検索してみると、確かに存在した。

ラケット修理サービス

修理を決意するまでの葛藤

正直、最初は躊躇した。知らない工房に大切なラケットを預けることへの不安、3,000円という価格が妥当なのかという疑問、そして何より「本当に直るのか」という根本的な不安。

でも、このまま部屋の隅に置いておくのも忍びない。新しいラケットを買うにしても、同じモデルはもう生産終了。似たようなスペックのものを探しても、あの打感は再現できないだろう。

ネットで口コミを探すと、評価は4.71/5.0と高評価。ただ、レビュー数自体は多くなく、詳しい修理内容や仕上がりについての情報は少なかった。

他社サービスとの比較検討

念のため、他にも修理サービスがないか調べてみた。結果は以下の通り:

サービス名 価格 対応範囲 納期 特徴
DDスポーツ修理工房 3,000円〜 全メーカー対応 2週間程度 どんな破損も対応可能
某スポーツ店修理サービス 5,000円〜 特定メーカーのみ 3-4週間 軽微な破損のみ
個人修理業者A 8,000円〜 要相談 1ヶ月以上 完全予約制

価格面では圧倒的にDDスポーツが安い。ただ、安すぎて逆に不安になるのも事実。

実際に修理を依頼してみた

結局、思い切って依頼することに。ウェブサイトから申し込み、ラケットを梱包して発送。この時点で「本当に戻ってくるのか」という不安がよぎる。

2週間後、連絡が来た。「修理完了しました」の文字を見て、期待と不安が入り混じる。

返ってきたラケットを見て衝撃

箱を開けた瞬間、息を呑んだ。新品のような仕上がりだったから。

亀裂が入っていた部分は完全に補修され、触っても段差を感じない。フレームの歪みも矯正されていて、グリップ部分まで綺麗にクリーニングされている。正直、ここまでの仕上がりは期待していなかった。

修理されたラケット

実際に使用してみた感想

修理から1ヶ月、週3回の練習で使用している。打感は以前とほぼ変わらず、むしろフレームの歪みが矯正されたことで、より安定したショットが打てるようになった気がする。

ただし、完璧ではない点もある:

  • 修理箇所は見た目には分からないが、重量バランスが若干変わった(約2g重くなった)
  • 塗装の色味が微妙に違う部分がある(光の加減で分かる程度)
  • グロメット交換が必要な箇所は別料金だった

とはいえ、3,000円でここまで蘇るなら文句なしだ。

修理サービスの意外な落とし穴

実は、修理依頼が殺到する時期があることが分かった。特に大会シーズン前の春先や秋口は混雑して、通常2週間の納期が1ヶ月近くかかることもあるという。

また、以下のケースは修理不可または追加料金が発生する:

  • カーボン繊維の完全破断(部分的な亀裂は対応可)
  • グリップ内部の破損
  • フェイス面積の30%以上の変形

事前に写真を送って見積もりを取ることをおすすめする。

こんな人にはおすすめしない

正直に言うと、このサービスが向かない人もいる。

完璧主義者には向かない。修理跡が全く分からないわけではないし、100%元通りになるわけでもない。新品同様を求めるなら、素直に新しいラケットを買った方がいい。

また、競技レベルでプレーする人も慎重になるべき。わずかなバランスの変化も気になるレベルなら、修理より買い替えを選ぶ方が賢明だ。

ラケット修理工房

修理後の耐久性について

気になるのは修理後の耐久性。1ヶ月使った段階では問題ないが、長期的にはどうなのか。

工房に問い合わせたところ、「適切なメンテナンスをすれば、通常使用で2-3年は問題ない」とのこと。ただし、修理箇所への過度な衝撃は避けるべきだという。

実際、同じサービスを利用した知人は、2年経った今も問題なく使用している。むしろ、定期的にメンテナンスに出すようになって、ラケットの寿命が延びたと言っていた。

総合的な評価と判断基準

結論から言えば、「思い入れのあるラケット」なら修理する価値は十分にある。

新品を買うより圧倒的に安く、環境にも優しい。何より、使い慣れた道具を使い続けられる満足感は大きい。

ただし、以下の条件を満たす場合に限る:

  • 修理跡や若干の性能変化を許容できる
  • 競技レベルではなく、趣味レベルでのプレー
  • ラケットに思い入れがある
  • 新品購入の半額以下で修理できる

逆に、これらの条件を満たさないなら、新品購入を検討した方がいいかもしれない。

まとめ:期待値を適切に設定すれば満足度は高い

ラケット修理サービスは、「完璧な復元」ではなく「実用的な延命」と考えるべきだ。

私の場合、3,000円で愛着のあるラケットが使えるようになったことに大満足している。新品なら3万円以上、中古でも1.5万円はする。その10分の1の価格で、8割以上の性能を取り戻せたのだから。

迷っているなら、まずは見積もりを取ってみることをおすすめする。写真を送るだけで概算を教えてくれるし、修理不可能な場合も正直に伝えてくれる。

大切なのは、期待値を適切に設定すること。新品同様を求めるのではなく、「また使えるようになればいい」くらいの気持ちで依頼すれば、きっと満足できるはずだ。

あの「バキッ」という音から2ヶ月。今では何事もなかったかのように、毎週末コートで汗を流している。修理を決断して本当に良かったと思う。