銀行の残高がたった3万円になった日のことは、今でも鮮明に覚えています。

初めての会社設立で司法書士に依頼した費用は約40万円。それが私の全財産でした。「プロに頼めば間違いない」そう信じていた自分を、今でも殴りたくなります。

その後、転職して貯金を作り直し、2度目の挑戦で出会ったのが弥生のかんたん会社設立でした。結果は...設立費用16万7000円。前回の半額以下で、しかも自分一人で完結できたんです。

なぜ私は40万円も失ったのか

最初の失敗は「知識不足」の一言に尽きます。当時の私は:

  • 電子定款という存在すら知らなかった
  • 印紙代4万円が不要になる方法があることを知らなかった
  • 司法書士の報酬相場が10万円前後だということを知らなかった
  • 自分でできる部分と専門家に頼むべき部分の区別がつかなかった

特に痛かったのは、紙の定款で4万円の印紙代を払ったこと。電子定款なら0円だったのに...

弥生のかんたん会社設立との出会い

2回目の起業準備中、同じ失敗は繰り返したくないと必死で情報収集していました。そんな時、起業仲間から教えてもらったのがこのサービスです。

「無料?そんなうまい話があるわけない」

正直、最初は疑いました。でも調べてみると、弥生株式会社は会計ソフトで有名な上場企業。怪しいサービスではなさそうです。

実際に使ってみた流れ

1. 弥生IDの登録(5分)

メールアドレスとパスワードを入力するだけ。FacebookやGoogleアカウントでの登録も可能でした。

ここで一つ気づいたのは、個人情報の入力が最小限だということ。まだサービスを使うかわからない段階で、詳細な情報を求められないのは好印象でした。

2. 会社の基本情報入力(30分)

画面の指示に従って入力していきます:

  • 会社名(商号)
  • 本店所在地
  • 事業目的
  • 資本金額
  • 役員情報

特に助かったのは事業目的の例文集。「ITコンサルティング業」と入力すると、関連する事業目的の候補が20個以上表示されました。

前回は司法書士に「事業目的を考えてきてください」と言われて、3日間悩んだのに...

3. 定款の作成(自動生成)

入力した情報から、定款が自動で作成されます。PDFで確認できるので、内容をじっくりチェックできました。

ここで重要なのが電子定款の作成依頼。通常5000円かかる電子署名費用を、弥生が負担してくれるんです。

他社サービスとの比較

実は、弥生以外にも会社設立サービスはいくつかあります。主要3社を実際に試して比較しました:

サービス名 弥生のかんたん会社設立 freee会社設立 マネーフォワード会社設立
利用料金 完全無料 完全無料 完全無料
電子定款作成費 0円(弥生負担) 5,000円 5,000円
オンライン申請 対応 対応 対応
登記後の手続き 一括対応 一括対応 部分対応
操作の分かりやすさ ★★★★★ ★★★★☆ ★★★☆☆
サポート体制 メール・チャット メール・チャット・電話 メール・チャット

正直に言うと、freeeの電話サポートは魅力的でした。でも、電子定款作成費5000円の差は大きい。結局、操作が簡単で費用が安い弥生を選びました。

つまずいたポイント(デメリット)

褒めてばかりでは信用されないので、困った点も正直に書きます:

1. 電話サポートがない

公証役場とのやり取りで分からないことがあった時、すぐに電話で聞けないのは不便でした。チャットサポートは丁寧でしたが、返信まで30分かかることも。

2. 定款の細かいカスタマイズが難しい

特殊な条項を追加したい場合、システム上では対応できません。私は「株式の譲渡制限」の文言を少し変えたかったのですが、結局デフォルトのままで進めました。

3. 士業の方は有料

これは私には関係ありませんでしたが、司法書士や行政書士が代理で使う場合は電子定款作成費が5000円かかるそうです。

オンライン申請のハードル

「オンライン申請対応」と聞いて期待していましたが、実際はかなり準備が必要でした:

  • マイナンバーカード(必須)
  • ICカードリーダー or NFCスマホ
  • WindowsのPC(Macは非対応)
  • PDF電子署名ソフト

特にWindowsのPC必須は盲点でした。私はMacユーザーなので、友人のPCを借りる羽目に...

結局、面倒になって書類を印刷して法務局に持参しました。これならMacでも問題ありません。

登記完了後の手続きが楽すぎた

会社設立は登記して終わりじゃありません。税務署、年金事務所、労基署...提出書類の山が待っています。

前回は、それぞれの役所のサイトから書類をダウンロードして、記入例を見ながら手書きで...1週間かかりました。

でも弥生なら、登記時に入力した情報が自動で反映されるので、確認してプリントアウトするだけ。2時間で全て完了しました。

特に助かったのは:

  • 法人設立届出書(税務署)
  • 青色申告承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉所得税の納期の特例申請書
  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届

これらが全て自動生成されます。しかも提出期限のリマインドメールまで。

実際にかかった費用の内訳

結果的に、私が支払った費用は以下の通りでした:

項目 金額 備考
弥生のサービス利用料 0円 -
電子定款作成費 0円 弥生が負担
定款認証手数料 17,000円 資本金100万円未満
登録免許税 150,000円 法定費用
合計 167,000円 -

前回の40万円と比べると、23万3000円の節約。この差額で、オフィスの初期費用を賄えました。

意外な落とし穴:CD-Rが必要

これは本当に盲点でした。電子定款の認証時、公証役場でCD-Rが必要なんです。

「今どきCD-R?」と思いましたが、これは法律で決まっているそう。コンビニに走って、700円のCD-R(1枚入り)を購入。使うのは1枚だけなのに...

他にも準備が必要だったもの:

  • 発起人の印鑑証明書(2通)
  • 身分証明書のコピー
  • 出資金振込後の通帳コピー
  • 会社の実印(法務局提出用)

特に印鑑証明書は発効から3ヶ月以内という期限があるので、早めに取得しすぎないよう注意が必要です。

3万人が使う理由がわかった

サービス開始から登録ユーザーが3万2000人を超えたそうですが、使ってみて納得しました。

何より大きいのは「失敗のリスクが少ない」こと。システムが必要事項の入力をガイドしてくれるので、書類の不備で却下される心配がありません。

実際、私の場合も一発で登記完了。前回は司法書士に頼んだのに、法務局から「定款の記載に不備がある」と連絡が来て、修正に1週間かかったのに...

こんな人には向かない

良いことばかり書いてきましたが、全ての人に向いているわけではありません:

  • 複雑な株主構成の会社:種類株式や新株予約権など、特殊な設計は難しい
  • 急いでいる人:電子定款の作成に2-3営業日かかる
  • 完全にお任せしたい人:最低限の知識と作業は必要
  • 許認可が必要な事業:建設業や人材派遣業など、追加の手続きは自分で

特に許認可については要注意。システムは会社設立までで、その後の許認可申請はサポート外です。

使ってわかった節約テクニック

実際に使う中で発見した、さらに費用を抑える方法:

1. 資本金は100万円未満に

定款認証手数料が資本金によって変わることを知りませんでした:

  • 100万円未満:15,000円
  • 100万円以上300万円未満:40,000円
  • 300万円以上:50,000円

私は最初300万円で考えていましたが、99万円に変更して3万5000円節約しました。

2. 会社印はセットで購入

弥生のサービス内で、会社印3点セット(実印・銀行印・角印)が特別価格で購入できます。楽天で個別に買うより5000円ほど安かったです。

3. 登記事項証明書はオンライン請求

登記完了後、銀行口座開設などで必要になる登記事項証明書。窓口だと600円ですが、オンライン請求なら480円。10通取ると1200円の差に。

サポート体制の実態

「電話サポートがない」と書きましたが、チャットサポートの質は想像以上でした。

特に印象的だったのは、公証役場とのやり取りでつまずいた時。「公証人から〇〇と言われたが、どう対応すればいいか」と質問したら、具体的な返答例まで教えてくれました。

ただし、対応時間は平日9:00-18:00のみ。土日や夜間は翌営業日まで待つことになります。

他のユーザーの評判を調査

私の体験だけでは偏るので、SNSや起業家コミュニティで評判を調べてみました:

ポジティブな声:

  • 「司法書士に頼む必要がないと分かって助かった」
  • 「フリーランスから法人成りする時に使った。簡単だった」
  • 「登記後の書類作成が楽すぎて感動」

ネガティブな声:

  • 「Macでオンライン申請できないのが不便」
  • 「もっと細かく定款をカスタマイズしたかった」
  • 「電話で相談できないのは不安」

概ね好評でしたが、やはりMac非対応とカスタマイズ性の低さは共通の不満点のようです。

1年使って分かった本当の価値

会社設立から1年。改めて振り返ると、最大の価値は「時間の節約」だったと思います。

費用面では23万円の節約でしたが、それ以上に:

  • 書類作成の時間:20時間→3時間
  • 役所回りの時間:3日→1日
  • 修正・やり直しの時間:1週間→0

この時間を事業準備に充てられたことが、今の成長につながっています。

次に会社を作るならどうする?

もし3社目を作ることがあったら、また弥生を使うと思います。理由は:

  1. 一度使ったので、2回目はもっとスムーズ
  2. 過去のデータが残っているので、入力も楽
  3. コストパフォーマンスは文句なし

ただし、以下の場合は専門家に相談します:

  • ベンチャーキャピタルから資金調達する予定がある
  • 複数の投資家が関わる
  • ストックオプションを発行する

これらは標準的な設立手続きを超えるので、最初から専門家のアドバイスが必要でしょう。

まとめ:使うべき人、使わない方がいい人

使うべき人:

  • 初めて会社を作る個人起業家
  • シンプルな株式会社・合同会社を作りたい人
  • 設立費用を最小限に抑えたい人
  • 自分で手続きを進められる人

使わない方がいい人:

  • 複雑な会社設計が必要な人
  • 全てお任せしたい人
  • Macしか持っていない&オンライン申請にこだわる人
  • 土日しか時間が取れない人

40万円をドブに捨てた経験がある私から言えるのは、「まず無料で試してみる価値はある」ということ。

登録だけなら5分。そこから先に進むかは、実際の画面を見てから判断すればいいんです。私のような失敗をする人が、一人でも減ることを願っています。